童話の幾つかは、残虐且つ、残酷で。

 
 
 だから、今、世界中の皆が知っている童話は改変、修正されているんだ。



 そう、尸魂界でも有名な『あの』話も大幅に修正されている。








 

世界で一番気高く悲しく、そして美しい話。














 「…………」

 「何だ、浮竹。絵本なんて読んでるのか?」

 「あぁ、京楽か。」

 



 浮竹の見舞いに来た京楽は浮竹の読んでいる絵本を覗き見る。






 「其れ、どんな話?」

 「あぁ、是は……」

































 昔、隠密機動に所属していた、優秀な死神が居て、その死神は名をと言った。


 は当時、先代隠密機動総司令官、そして『刑軍』軍団長に就いたばかりの四楓院夜一を御守する重要な役職に就いていた。


 はこの仕事に就くのが幼少期からの夢で、毎日辛く、厳しい仕事ばかりだったが、とても幸せだった。


 


 しかし、ある日その幸せか容易く壊れてしまうのだ。





 は、虚によって魂を奪われ、他の死神を襲おうとしたのだ。




 揚句、は虚に魂を奪われたまま地下牢に閉じ込められてしまう。




 そこに、一人の男が現れる。





 彼は未だ隊長ではなかったが、卒業して直に席官に上り詰める程の優秀で。





 そんな彼はひょんなことからに恋心を抱いてしまった。






 周りからは『止めろ』と言われ、を悪く言う者も居た。





 
 でも、嫌いになることはできなかった。







 寧ろ、日に日に『好き』という気持ちは膨れるばかりで。







 其れと同時にを救いたいと思うばかりだった。







 その後、彼はの居る地下牢に向かった。






 は、混濁した意識の中でも、未だ、本来の自分を保っていた。







 
 でも、そのせいで、自殺しようと何度も試みていた。









 彼は、毎日毎日、の下に通い詰めた。








 そしてその内、彼はの囚われている牢の鍵を開け、中に入る。







 は、自分が彼を傷付けてしまうと思ったのか、『来るな!』と強く叫んだ。






 だが、彼はその声に立ち止まる事は無く、を抱き締め、







 キスをした。







 するとはゆっくりと目を瞑り眠りに着き、彼もに添い寝する様に眠った。








  
 そして、彼が目を覚ますと、隣にはの姿は無く……











 「―――……その代わりに手紙が置いてあった、そうだ。そして、その手紙には『有難う』とだけ…。」

 「ふうん。悲しい話だねぇ…」
 
 「でもさ、この話には元になる話があってな、其れが今の話より悲しいんだよ。」

 「………」










 「が隠密機動で夜一を護り、そしてある日虚に魂を乗っ取られて地下牢に隔離されているのを男が助けに行く、までは同じなんだけどな…」


 

 

 そして、また浮竹は遠い目で話を始める。













 は意識が混濁して、その中でも、心は失わなかったのか、


 


 

 毎日会いに来てくれる彼を







 自分が殺さない内に、自分自身を斬ったんだ。










 『御免なさい。私は貴方を好きでした。』









 其れだけ言って、は命を絶った。 









 一方、彼の方はショックで気絶。









 次に目を覚ます頃にはへの気持ちも、のコトも忘れていたそうだ。














 「な、悲しいだろ?」


 「あぁ、そうだねぇ。」
 
 
 そう言って京楽は苦笑する。
 

 「でもさぁ」


 「ん?」







 「この話が何故か気になって調べてもさぁ、どうしても解んなくてなぁ……」

 
 「何が?」















 「さんを助けた『彼』の名前が。」












 京楽は冷や汗をタラリ、と流す。


 











  
 


 「なぁ、浮竹。」


 「あ?」


 「どうしても知りたいか…?」


 「どうしたんだよ、急に改まってさぁ。」


 「兎に角、知りたいか?」





 京楽は真剣な目で浮竹を見る。


 其れに圧倒されたのか、  







 「う…ん。」

 
 浮竹は息を呑んでそう答えた。









 




 「その話の『彼』はお前なんだよ、浮竹。」


 「………ぷっ。」








 フハハハハハ、と浮竹は笑い出す。










 「ククククク、あー腹痛ぇ〜。冗談はよせよ京楽。」


 「じゃあ、その箪笥の中、探してみろよ。」


 「???」


 

 浮竹は京楽に言われたとおり、箪笥の中を探る。




 「あ、そこの箪笥に桐でできた箱あるだろ?」

 
 「桐の箱…あー、あったあった。っていうか、何で知ってんだよ。」


 「まぁ、まぁ、開けてみてよ。」

 
 「あぁ…」














 パカ…







 


 浮竹が箱の蓋を開けると細かい埃が舞う。


 その中には古びた手紙が一つだけ入っていた。













 「――…開けてみな。」

 
 「あ、あぁ。」






 カサ…











 

 拝啓、浮竹十四郎様


     私が、心まで虚に奪われる前に書いておきます。

    
     貴方には、とても悪いのですが、
     

     私は貴方を好きになってしまいました。

 
     虚に魂を奪われてしまう私には未だ『愛しています』なんて高貴な言葉、紡げませんが。


     もし、次に会える時が来たならば、     

 
     『愛している』と言っても宜しいでしょうか?


                           榊 
















 浮竹の目からは涙がつう、と流れ出た。







 「浮竹……」


 「俺は……」


 京楽は笑顔で頷く。


 「大事な事を忘れていたんだ…。」


 「あぁ、そうだな。」


 「決めた!!!」


  

 浮竹は寝床から立ち上がる。




 「俺、早く病気治して、を探すよ!!!」





 「そうだな…。」







 






 未だ未だ、それは叶うことは無いかもしれないけれど。










 そんな遠くもないだろう?
















 ==小説後記==

 長くてすみません!!そして、オチ無しですみません!!!

 (2007.4.3)